特別講義DS Ch3 Pythonと環境構築
1 イントロダクション
データサイエンスは,データを利用して現象を発見したり,予測をする科学の総称です. データの作成やデータを分析する前の処理,利用するコンピュータ関連の技術なども対象となります.
データサイエンスと関連の深い分野/用語として統計や機械学習,AIがありますが,それらもデータサイエンスの一部とみなすことができます.
統計は,データ自体の取得・作成・集計から,データの構造を分かりやすく分析・可視化する学問です.機械学習は,データから予測モデルを作り,意思決定などに応用する学問です. 統計や機械学習・AIは明確に分割することができるものではなく,かなりの部分が共通しています. 特に皆さんがこの講義の先修科目である統計学入門で学んだ,初歩的な統計は,機械学習やAI,データサイエンス全般を学ぶ上で,前提知識となります.この他,どちらかに分類できるわけではない,モデリング,AI,シミュレーション,最適化,次元削減,など様々なトピックが含まれています.

この講義では,統計学入門で学んだ,可視化,数値化,検定,回帰などの統計学の手法をPCを使って行う他,統計学入門の範囲を超えたより発展的な手法に関しても学習します.
しかし,このようにデータサイエンスは非常に広範な学問なので,統計学入門のように個別の手法に関して,細かく理解することはせず,それぞれの概要と利用方に関してのみを扱います.
1.1 プログラミング言語の種類
データサイエンスは言葉の通り,データを扱います. 現在ではデータは基本的に,電子データとして収集,処理されるため,それらの編集,処理にはコンピュータを利用し,操作は基本的にはプログラムによってなされます. したがってプログラミングは,データサイエンスのための前提知識となります.
この講義では最終的には,学生それぞれに研究のためのプログラムを組んでもらいます. データサイエンスや統計でよく使われる言語は, Python, Julia, R, SPSS, matlab などいくつかありますが, この授業では, 現在世界的に広く使われており,習得も容易なPythonを利用します.
プログラミング言語には沢山の種類がありますが,言語によって機能や得意なことが異なります.

プログラミング言語は 実行方式, 書き方,検査の仕方などの特徴がそれぞれ異なり,大まかにはそれぞれ以下のような意味になります.
実行方式
プログラミング言語は,人間にとって理解しやすくデータ構造やアルゴリズムを記述するための手段です.しかし,コンピュータはプログラミング言語を直接理解することはできません.そのため,書かれたプログラムはコンピュータが解釈できる形式,すなわち0と1のビット列である機械語に翻訳される必要があります.この翻訳プロセスは,プログラムの実行方式を以下の二つに分ける要因となります.
- インタプリタ方式
インタプリタ方式では,プログラムは逐次的に機械語に翻訳されながら実行されます.この方式の特徴は,コンパイルする必要がないため,翻訳と実行が同時に行われる点です.これにより,プログラムの変更がすぐに反映されるため,開発中のテストやデバッグが容易になります.しかし,実行のたびに翻訳を行う必要があるため,実行速度が遅くなることが欠点です.
- コンパイラ方式
コンパイラ方式では,プログラム全体が事前に機械語に翻訳され,その結果として得られる実行可能なプログラムが生成されます.コンパイラ方式の利点は,一度コンパイルされたプログラムは,何度も実行される際に追加の翻訳が不要であるため,実行速度が速いことです.また,コンパイル時にプログラム全体を分析できるため,エラーやバグの発見が早期に行え,より安全性が高まるという利点があります.
この二つの実行方式は,プログラムの性質や用途に応じて選択されます.インタプリタ方式は開発の柔軟性が求められる場合に適しており,コンパイラ方式は性能が重視される場合に好まれます.プログラマはこれらの特性を理解し,それぞれの場面で最適な選択をすることが求められます.
書き方
プログラミングとは,基本的にコンピュータに対して実行してほしい命令を記述する作業です.現在主流のプログラミング言語には,大まかに手続き型言語と関数型言語の二つの記述方法が存在します.
- 手続き型言語
この言語タイプでは,プログラムが「何を,どうするか」を順番に記述していきます. Python,Java,VBAなど多くの広く使われている言語がこの方法を採用しています. これにより,処理の流れが直観的に理解しやすくなります.
- 関数型言語
関数型言語では,プログラムを実行によってユーザーが得たい結果を抽象化し,関数の組み合わせで記述します.このアプローチは,安全性の向上やデバッグのしやすさといったメリットを提供しますが. 概念の抽象化により理解が難しくなることがあります.
近年では,手続き型言語にも関数型の構文が取り入れられるようになり,手続き型言語内で関数型風に記述することや,その逆も可能になっています.
これらの違いについて更に詳しく知りたい方は,別の講義資料で更に詳しく説明しています.
検査の仕方
プログラミングは,データ構造とアルゴリズムを使用して命令を記述する作業です.ここではデータ型の詳細に深くは触れませんが,あらゆるプログラミング言語において,データはコンピュータのメモリ上に数値の羅列として存在します.それらの数値に意味を与えることでデータ型が形成されます.
プログラムは実行時に,これらのデータ型が適切に使用されているかを検査します.主な検査方法には動的型付けと静的型付けがあります.動的型付けでは,プログラムの実行時にデータ型が決定され,静的型付けではコンパイル時にデータ型が固定されます.さらに,型付けには「弱い型付け」と「強い型付け」という区別も存在しますが,この講義ではその詳細には触れません.興味のある方は,このトピックについてさらに調査してみてください.
- 動的型付け 動的型付けのシステムでは,プログラマが変数の型を明示的に宣言する必要がありません.代わりに,コンピュータはプログラムの実行時に型を推論し,適切な型を自動で割り当てます.この柔軟性により,プログラマはより迅速に開発を進めることが可能になります.一方で,このシステムではコンパイル時の型チェックが行われないため,実行時に型関連のエラーが発生するリスクが高まります.そのため,安全性を確保するためには,プログラマ自身が型の整合性に注意を払い,エラー処理やテストにより問題を検出する必要があります.
- 静的型付け
静的型付けでは,プログラマが変数や関数の型をコード内で明示的に宣言し,これらはコンパイル時にチェックされます.この事前の型チェックにより,プログラムの安全性が向上し,実行時のエラーが減少します.また,コンパイラが型情報を利用して効率的なコード生成を行い,パフォーマンスが向上することがあります.静的型付けは特に,大規模プロジェクトや高い信頼性が求められる場合に適しています.
プログラミング言語は,このような区分や,それ以外の様々な機能によって,用途の向き不向きが決まります(大雑把な目安です).

ではこれらの特徴を踏まえて,Pythonとはどのような言語なのかを見てみましょう.
Pythonは
- インタプリタ型言語で
- 機械語に翻訳しながら動く
- 手軽に書けて手軽に試せる
- でも少し安全性が低く,遅い
- 手続き型言語で
- 次に何をするかを順番に書く
- (ただし関数型っぽい書き方もできる)
- 動的型付け言語で
- 型検査を動かしながら実施
- 動かしてから型が違うと失敗する
これらは,プログラミング言語の大きな分類からみたPythonですが, Python固有の特徴として以下のようなものがあります.
- とにかく読みやすく書きやすく覚えやすい
- ABC言語という教育用言語が元になっている
- 予約語が少ない, → 覚えることが少ない
- インデントでかき分け → 間違いが少ない
- だれが書いても同じになる(と言われてはいる)
- ABC言語という教育用言語が元になっている
- ライブラリが豊富
- 統計処理を全部0から自分で書くのは大変
- 他の人が作ったものを使えるようにするのがライブラリ
- 様々な大学や企業,研究者が膨大な量の統計処理,機械学習ライブラリを開発している
- 遅いけど,Cなどと連携しやすい.
- プログラミング言語ごとに速度は異なる.
- Pythonは結構遅いので大きな計算に時間がかかる.
- とても早い言語で遅い部分を書き換えやすい
- ライブラリは基本的に早くなっている
Pythonが教育用に良く使われるのは, インタプリタ方式の動的型付け言語であることから手軽に書けるだけではなく,もともと言語として簡単に書けるように作られていることが大きいです.
また, 統計,データサイエンス分野のライブラリが充実しており, これによって誰でも簡単に複雑な統計処理やデータサイエンスの技法が利用できることで,Pythonが広く普及しています.
簡単 → 教育用に → 多くの人が使う → ライブラリが充実 → もっと多くの人が使う
という流れがPythonの最大の強みと言えるでしょう.
実際にPythonはユーザー数が増え続けており,プログラムの共有サイトGitHubにおける2023年のすべての言語のなかで2番目にユーザ数が多い言語となっています. Top 10 Programming languages on GitHub

1.2 授業準備
この講義では,プログラムを自分で作成し,様々な演習をこなしてもらいますが,その前段階として,いくつかの準備が必要となります. このあたりはこの科目の先修科目の統計学入門でも扱っていますが,履修していない人もいますので,順番にやっていきましょう. 非常に基礎的な内容なので, 問題のない人は飛ばしましょう.
1.2.1 テキストエディタ
テキストエディタとは,プログラムを書くためのソフトウェアです. プログラムを書くことをコーディング(Coding)といいます.
テキストエディタには沢山の種類があり,それぞれ独自の機能を持っています. Windwosに最初から入っている「メモ帳」もテキストエディタですが,プログラムを書くために様々な機能が追加された高機能なテキストエディタも沢山あります.
例えば,シンタックスハイライト機能は,以下のプログラムのように,プログラムの記述を役割や意味に応じて色付けして見やすくしてくれます.
## シンタックスハイライト
from datetime import datetime
def greet_based_on_time():
= datetime.now()
now = now.hour
current_hour
if 5 <= current_hour < 12:
= "Good morning, world!"
greeting elif 12 <= current_hour < 18:
= "Good afternoon, world!"
greeting else:
= "Good night, world!"
greeting
return greeting
# 関数を呼び出して結果を表示
print(greet_based_on_time())
また,スペースをタブに変換するなどの機能も非常に便利です. 最近では生成AIを利用した自動補完機能がついたエディタなどもありますが,本講義における生成AIの利用に関しては第2回でコードを書き始めた際に説明します.
今までメモ帳以外のテキストエディタを利用したことが無い方には,シンプルなSublime Text 3をおすすめします(今世界的に人気があるのは VSCodeです.非常に便利ですが機能が多すぎて皆さんが混乱する可能性があるので,こちらを選びました).
既に何かしらのテキストエディタを利用している方は,現在使用しているエディタをそのまま利用して頂いても構いません.
このURLをクリックして,ページ上部にあるDownloadをクリックします. 自分のPCに合わせたインストール方法を選択しましょう.

SublimeTextもいろいろな機能を追加することができます. 「SublimeText 設定」などで調べて,好きなようにカスタマイズして構い舞いません. カスタマイズをしなくても基本的な機能には問題ありません.
1.3 IMEの設定
プログラムは基本的に 「半角英数字」 で記述されます. プログラム中に全角の空白や記号が交じるとエラーの原因となる場合があります. そのため,プログラムを書く前に,そういったミスが起きないようにIMEの設定をしましょう.
タスクトレーからIMEの設定ができます.基本的に記号をすべて半角に設定しましょう(スペースは必ず半角にしましょう).特に,句読点をコンマとピリオドに変更しましょう.

1.4 CLIの基本操作
プログラムの開発環境にはマウスなどでクリックして操作するGUI(Graphical User Interface)をもったIDE(Integrated Development Environment)などもありますが,基本的には文字によってコンピュータに命令を送るCLI(Command Line Interface)を利用します. 映画やマンガなどで,ハッカーが黒い画面に文字を打っているあれのことです.
コンピュータのオペレーティングシステムとユーザー間のCLIを提供するプログラムをShellといい,Windowsでは,Command PromptやPowerShellなどがあります. MacなどのUnix系では,Bashやzshがあります. いずれも (Windows) Terminalというソフトウェアを介して利用します.
本講義では環境や好みによって好きな環境で開発して構いませんが,ここでは,PowerShellの利用法を解説します.
Windows11の検索バーで Terminal
と検索して,出てきた Terminal
をクリックしましょう.

自動的にWindows PowerShell
が起動します. 立ち上がった,黒色の画面に文字でコマンド(命令)を入力して,コンピュータを操作します.

1.4.1 エンコーディング
実際にコマンドを入力する前に, 初心者がつまづきやすいポイントとして,Windowsのエンコーディングについて解説します.
PCは人間の使う文字(日本語,英語など)が理解できません.PCは機械語と呼ばれる言語で命令を受け付けます.一方で,人間は機械語を読むのが困難です.そこで,人間の使う文字と,機械語の間に変換ルールを設けて人間の文字でされた命令をPCにわかる文字に変換します.この変換ルールを文字エンコーディングと呼びます.
エンコーディングには複数の種類があります(日本語設定のWindowsはShift-JIS,Unix系はUnicodeが一般的です). PythonはUTF-8という文字エンコーディングがデフォルトなので,Windowsにおいても可能な限りUTF-8を用いた方が良いです.
そこで,ターミナル上で利用するエンコーディングを変更します.
PowerShellを起動して, chcp 65001
と打ち込み, PowerShell上で利用する文字エンコーディングをUTF-8に変更しましょう. chcp
が利用する文字コードを変更するコマンド(change code page)で,その後に変更したい文字コードを入力します. 65001
はUTF-8
のコードページ(Windows独自の文字エンコーディング)です. これはPowerShellを起動する度に行ってください.
chcp 65001
と入力すると,
Active code page: 65001
PS C:\Users\user>
のように表示されるはずです.
1.4.2 日本語表示
Power Shellの設定によっては日本語が表示されず,日本語部分が □
で置き換えられて表示されます.これは,使用しているフォントに日本語が含まれていないために発生します.

設定を変更してて日本語を表示可能にしましょう( 適当な日本語を入力してみて,問題なく表示されるようであれば,変更は必要ありません).
左上の下向きの矢印 > 既定値 > 外観 > フォントフェイス
の部分を日本語フォントに変更し保存
をクリックすることで,日本語が表示されるようになります.



その他色やサイズなど,好きな設定に変更できます. あとで,好みにカスタマイズしましょう.
1.4.3 ディレクトリ
基礎的なコマンドを学ぶ前に,ディレクトリに関して理解しておきましょう. コンピュータの中のデータは,以下のような木構造になっています. このような木構造によるファイルの構造をディレクトリといいます.
C: -- Users -- hoge
|
-- hoge2 -- Desktop
|
-- Downloads
|
-- Documents -- huga
|
-- huga2
CLIにおいて,ユーザはこの木構造のどこかに存在しており,この木構造を移動しながら様々な作業を行います. 現在いるディレクトリのことを working directory
(以下wd)やcurrent directory
といいます.
1.5 基礎的なコマンド
ここでは, この講義で必要となる最低限のコマンド,特にディレクトリの移動に関するコマンドを学習します.
wdは, CLIの左側に表示されていることが多いです.
PS C:/Users/hoge2>
のように表示されていれば今C:
ドライブ下のUsers
下のhoge2
がwdとなります.
Windowsでは,ディレクトリを区切る文字が
¥
あるいは\
で表示されていると思います.Macでは,
/
です.
本資料では,/
を利用しています. 自分の環境に併せて適宜読み替えてください.
CLIの左側に表示されていない場合にもpwd
コマンド (print working directory)を入力すると,現在のディレクトリが表示されます.
PS C:/Users/hoge2> pwd
PATH
----
C:/Users/hoge2
wdの下に何があるかを調べるコマンドとしてls
コマンド(list)があります.
以下, PS C:\Users\hoge2
の部分は省略します.
> ls
Desktop
Downloads
Documents
※実際の画面では,もう少しいろいろな情報が書かれているかと思います.
ディレクトリ構造を確認するCommandとしてtree
があります. tree
と入力してEnterすることで,wd以下のディレクトリ構成が確認できます.
> tree
Folder PATH listing
Volume serial number is 00000157 B8F4:6480
C:.
├───Contacts
├───Desktop
├───Documents
│ ├───hoge
│ └───slds
│ └───program
├───Downloads
tree [PAHT]
と入力すると, wdではなく指定した[PATH]
以下のディレクトリ構造が表示されます.
また, /f
オプションを加えることでファイルも表示されます.
> tree .\Documents\ /f
Folder PATH listing
Volume serial number is 000001D1 B8F4:6480
C:\USERS\AKAGI\DOCUMENTS
├───hoge
│ hello.py
│ slds-2-10.py
│
└───slds
└───program
hello.py
Macの場合は,tree
コマンドは入っていないので,brew
などを利用してインストールする必要があります.
brew
に関しては自分で調べてみましょう.
また,オプションもWindowsとは異なっています.
コマンド | 意味 |
---|---|
-d | ディレクトリのみ表示 |
-L N | N 階層まで表示 |
-P X | 正規表現Xに従って表示 |
> tree
.
├── hoge
│ └── hoge.py
└── huga
└── huga.py
3 directories, 2 files
> tree -d
.
├── hoge
└── huga
3 directories
> tree -L 1
.
├── hoge
└── huga
3 directories, 0 files
> tree -P "hoge*"
.
├── hoge
│ └── hoge.py
└── huga
wdから別のディレクトリに移動するコマンドとして cd
コマンド(change directory)があります
cd [移動先]
と打つことで,lsコマンドで出てきた,ディレクトリに移動することができます.
> ls
Desktop
Downloads
Documents
> cd Documents
> pwd
PS C:/Users/hoge2/Documents
移動先のディレクトリ名はすべて自分で入力する必要はありません. 最初の数文字を入力してTab
Keyを押すと,自動で保管してくれます.
cd ..
と打つと一つ前のディレクトリ,cd ~
と打つとホームディレクトリ(基本的には最初に開いた際にいた場所)に一挙に移動することができます.
> pwd
PS C:/Users/hoge2/Documents
> cd ..
> pwd
PS C:/Users/hoge2
> cd Documents/huga
> pwd
PS C:/Users/hoge2/huga
> cd ~
> pwd
PS C:/Users/hoge2
mkdir [作りたいディレクトリ名]
コマンド(make directory)で,新しいディレクトリを作成できます.
rmdir [消したいディレクトリ名]
コマンド(remove directory)で,ディレクトリを消すことができます.
> pwd
PS C:/Users/hoge2
> ls
Desktop
Downloads
Documents
> cd Documents
> ls
huga
huga2
> mkdir huga3
> ls
huga
huga2
huga3
> rmdir huga3
> ls
huga
huga2
rmdir
コマンドでは中身のあるディレクトリは消せません. オプションを追加することで消せますが,危険なのでここでは教えません.興味があったら自分で調べてみましょう.
練習:作業用ディレクトリを作ろう
これから,作業をするためのディレクトリをコマンドで作成しましょう.
- Documentsに移動
- Programs というディレクトリを作成し移動
- Python というディレクトリを作成し移動
- slds というディレクトリを作成し移動 (名前は好きに設定して良いです. slds; special lecture data science)
これからこの講義で利用するプログラムなどはsldsに保存しましょう.
1.6 環境構築
自身の環境(PC)でプログラムが動くようにすることを環境構築といいます. Python自分のPCで動くように設定をしましょう.
Pythonの環境構築に関して説明します.Pythonを動かす方法は沢山あります.一つのソフトの中でプログラムの編集から実行まで全て完結するIDE(統合開発環境)やブラウザ上でSaaSを通じて実行する方法もありますが,ここではCLIを利用して実行する方法を準備します.Windowsを所有している学生が多いと思われるので,Windowsを前提に説明します. それ以外のOSの方は分からなければ教員に聞いて下さい.
Pythonの環境構築にもいくつかの手法がありますが,現在は pyenv
やDocker
を利用した仮想環境でpythonのversionやライブラリをアプリケーションごとに分ける方法が主流です.
本講義では, pyenv
を利用するため,以下pyenv
環境の構築を行います.
1.6.1 現状の開発環境の削除
Terminalを開いて, python --version
と入力しましょう. すでにpython
が入っている場合は,Pythonのversion情報が表示されます.
> python --version
Python 3.11.9
Pythonがインストールされていない場合は以下のような表示になります.
> python --version
fha : The term 'python' is not recognized as the name of a cmdlet, function, script file, or operable program. Check the s
pelling of the name, or if a path was included, verify that the path is correct and try again.
At line:1 char:1
Python の version情報が表示された場合は, pyenv --version
と入力してすでにpyenv
が入っていないか確認してください.
> pyenv --version
pyenv 3.1.1
pyenv の version情報が表示されている場合はすでに環境構築が済んでいるので飛ばしてください. pyenvのversion情報が表示されない人はまず現行のPythonを削除しましょう.
設定 > アプリ > インストールされているアプリ
から python
を検索して, Python X.X
の形式のアプリと,Python Luncher
などをアンインストール
してください.
その他, anaconda
などが入っていたらアンインストールしておいてください.
アンインストールが終わったら,terminal を一度開き直して, python --version
コマンドで確認してみましょう.
(VSCodeなどTerminalにアクセスするアプリを開いている場合は,閉じておきましょう.)
1.6.2 pyenvのインストール
続いて pyenv for windowsを参考にpyenv
環境を構築します.
Terminal を再度開き以下のコマンドをコピー,貼り付けしてEnterを押してください.
Set-ExecutionPolicy -ExecutionPolicy RemoteSigned -Scope CurrentUser
Quick start 内のコマンドをコピーしてTerminalに貼り付け,Enterを押してください.

Terminalを再起動して,pyenv --version
を入力し,version情報が表示されれば成功です.
> pyenv --version
pyenv 3.1.1
1.6.3 Pythonのインストール
Pythonにはいくつかのversionがあり,必要に応じて切り替えて利用します.
まずはインストール可能なversionを pyenv install --list
コマンドで確認してみましょう.
> pyenv install --list
:: [Info] :: Mirror: https://www.python.org/ftp/python
:: [Info] :: Mirror: https://downloads.python.org/pypy/versions.json
:: [Info] :: Mirror: https://api.github.com/repos/oracle/graalpython/releases
2.4-win32
2.4.1-win32
2.4.2-win32
.
.
.
この中から一つを選んでインストールします.
最新のものをインストールするとライブラリなどが対応していない場合があるので,3.11.9
あたりをインストールしておきましょう.
> pyenv install 3.11.9
:: [Info] :: Mirror: https://www.python.org/ftp/python
:: [Info] :: Mirror: https://downloads.python.org/pypy/versions.json
:: [Info] :: Mirror: https://api.github.com/repos/oracle/graalpython/releases
:: [Downloading] :: 3.11.9 ...
:: [Downloading] :: From https://www.python.org/ftp/python/3.11.9/python-3.11.9-amd64.exe
:: [Downloading] :: To C:\Users\akagi\.pyenv\pyenv-win\install_cache\python-3.11.9-amd64.exe
:: [Installing] :: 3.11.9 ...
:: [Info] :: completed! 3.11.9
pyenv
はディレクトリごとに使用するPythonのバージョンなどを管理できます.
現行のディレクトリのみで,特定のversionのPythonを利用したい場合は
pyenv local <使いたいPython>
で設定します.
local
で設定されているディレクトリ以外全てで共通のPythonを使用したい場合は
pyenv global <使いたいPython>
で設定します.
今は,
pyenv global 3.11.9
で全体に3.11.9
を設定しましょう.
> pyenv global 3.11.9
> python --version
Python 3.11.9
python --version
で指定したversionのpythonが表示されればPythonの環境構築完了です.
1.7 Hello World
初めて作成するプログラムとして標準出力(PowerShellなどの画面)にHello World
と出力するだけのプログラムを作成してみます.
PowerShell
を開いて,自分の作業用ディレクトリに移動します.
> chcp 65001
> cd Documents/Programs/Python/slds
テキストエディタで新しいファイルを開き,作業用ディレクトリにhello.py
という名前で保存しましょう.
.py
はPythonプログラムの拡張子です.
保存は,タブからFile > save with encoding > UTF-8
の順にクリックしUTF-8
で保存しましょう.
それ以降は Ctrl + s
などで上書き保存しても構いません.
作成したディレクトリに移動し, lsコマンドでファイルがあるか確認しましょう. ょう.
> ls
hello.py
確認できたらhello.pyに以下の2行を書き足して上書き保存します.
# -*- coding:utf-8 -*-
print(“Hello world!”)
保存できたらpython hello.py
コマンドでプログラムを実行します.
標準出力にHello World!
と表示されれば成功です.
> python hello.py
Hello World!
ここまでで,皆さんはPCでプログラムを書く準備が整いました. あとはプログラムの書き方を学習すれば自身の環境で開発が行なえます.
1.8 プログラミングの勉強の仕方
プログラミング言語は,文字通り言語です. 英語などと同じ様に,使わないと身につきません.なので,大事なことは勉強するより使うことです.
英語の勉強で,一つひとつ文法を覚えることは大切かもしれませんが,実際に英文を書いたり,会話しないと使えるようにはなりません. プログラミングの学習で,学習用の資料や教科書を一つ一つ読んだり,ノートに書き写す人がたまにいますが,かなり効率が悪い方法です. 何も分からなくてもいいので,取り敢えずプログラムを書いて実行するようにしましょう. 資料に載っている例はすべて,実際に書いて実行してみましょう.
一番いい方法は,何も分からなくても取り敢えず,プログラムをつかってしてみたいことを実行することです.1からすべての構文などを覚えようとしないで,自分がやりたい,しなければならないことを,書き始めましょう. 分からないところだけを調べれば十分です.
その際に,新しく知ったことは,メモなどして,あとで参照できるようにしておきましょう. その資料が後々役に立ちます.
プログラミングは,すべて暗記する必要はありません. 覚えていなくても,それの調べ方や載っている資料を知っていれば十分です. 何回も使う機能であれば自然に覚えます.
ただし, Pythonは非常に多くの人が利用しているので,みなさんがこの講義で習うレベルのことは検索すれば既に,完成したプログラムを参考にすることができます. また,ChatGPTなどの生成AIを利用すれば,皆さんの書いたプログラムよりかなりできの良いものをすぐに得ることができます. それらを見て勉強することは大切ですが,ただ,只管コピペしたり,生成AIの結果を利用しているだけでは,全く身につきません. 検索して出てきたコードや,生成AIによるコードを利用しても構いませんが, それをただ貼り付けるのではなく,自分で読んで,理解するようにしましょう.
知らない部分,自分では書けない部分が見つかったらそれを理解するように勉強しましょう. ChatGPTに質問しても構いません. ただ,聞いたことを説明できるようにしましょう.
自分で説明できないものを使えるのはせいぜい学校の課題くらいです. 仕事や研究では,中身の良く分からないコードは利用できません. 最低限自分で理解したものだけを利用してください.
講義では,結果があっていればよいだけではなく,なぜそのように書いたのか,どのような意味か,なぜこうなるのかなどを皆さんに聞きますので,理解に務めるようにしましょう.
演習
- 演習1 Shellコマンドの調査
今回ならったいくつかのコマンド以外にも便利なコマンドが沢山あります. 3つ調べて,使い方を説明してください.
- 演習2 チートシートの作成
チートシートとは「それだけを見れば必要な情報が分かるメモ書き」のことです. プログラミングの学習では, 自分でノートを取って,それさえ見ればなんとかできる資料を作る のは非常に有用です.
.ppt
でも.txt
でも形態は何でも良いので, 自分だけのチートシートを作成して, 今日覚えたこと,調べたことなどをメモしていきましょう.
◦ CLI, Pythonの基礎, Pandasなど学習の区切りごとにシートを分けると便利です.
◦ スライドサイズを事前に大きく設定しておくと便利です
書き方は自由ですが, 検索して有名なチートシートを参考にしてください.
このチートシートは後で紹介してもらいます.
- 演習3
print()
の利用
今回作成したhello.py
における
print()
という関数は()内の文字(""
で囲われている部分)を標準出力する関数です.
print()
の括弧内の Hello World!
部分を好きな文字に書き換えて実行してみましょう.
演習について
この資料では,所々に演習が指定されています. 演習は自分で行い, どのようにやったのかを講義中に発表,あるいは宿題として提出してもらいます.
家で演習を進めた場合には,講義中にそれが再現できるように,
- どのようにやったのか
- なぜやったのか
などを人に説明できるように必ず作成したメモ,資料などを残しておきましょう.